もしも従業員が仕事中や通勤中に交通事故が起きてしまったらどうしますか?

通勤中の交通事故の治療費や休業中の補償給付などの請求は、労災保険を使えばいいのか、それとも事故相手側の自動車損害保険を使えばいいのか悩みますよね。
実は、どちらの保険を使うのかは本人(被災労働者)の選択の自由があるため、どちらを選択してもいい事とされています。
労災における第三者行為災害の成立要件とは、
① 労災としての災害が「第三者」の行為によって生じたもので、
② 被災労働者(遺族も含む)に対して、損害賠償の義務があるもの。
被災労働者は、双方を取得
第三者に対する損害賠償請求権
労災保険に対する給付請求権
労災事故が自動車事故の場合、自賠責保険と労災保険への損害賠償請求が生じます。
自賠先行
→自賠責保険等から支払われた額のうち、同一の事由に係るものについては、その額まで労災保険は控除される(支給されない)
※なお、特別支給金(休業(補償)等給付と同時に支払われる休業特別支給金(給付基礎日額の20%相当額)など)については、支給調整は行われず、満額支給されます。
労災先行
→同一の事由について自賠責からの支払いは受けることができない
労働者災害補償保険法第12条の4において、第三者行為災害に関する労災保険給付と民事損害賠償との支給調整を次のように定めています。
① 先に政府が労災保険給付をしたときは、政府は、被災者等が第三者に対して有する損害賠償請求権を労災保険給付の価額の限度で取得する(政府が取得した損害賠償請求権を行使することを「求償」といいます)
② 被災者等が第三者から先に損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で労災保険給付をしないことができる(「控除」)
自賠責保険・労災保険のどちらを選択すべきなのか…
・診療単価の点
・過失相殺の点
・自賠の支払い限度額の点
・労災保険は退職によって変更されない点
・補償(治療)期間の点 等
被災者にとって、どのように手続きを進めていったらよいのか、労災保険、自賠責保険のどちらを先行させた方が有利なのかは、労災保険、自賠責保険の制度、給付内容等の理解した上で総合的に判断しましょう。
【第三者行為災害を伴う労災保険給付の手続き】
所定の請求書の提出に併せて「第三者行為災害届」等の提出が必要です。

※(労災保険 第三者行為災害のしおりP7 引用)
執筆:
アイズ社会保険労務士事務所 代表 社労士 / 愛知県雇用労働相談センター相談員
鈴木 幸子
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