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退職願の撤回 – 労働契約の終了employment-policy

労働者と使用者が合意によって労働契約を将来に向けて解約することを合意解約という。
裁判例では、合意解約の申込みとしての退職願について、使用者の承諾の意思表示がなされるまでの間は撤回できるとした事例がある。
参考となる裁判例
【白頭学院事件(大阪地判平成9年8月 29 日)】

教員(原告)が校長に退職願を提出したが、教職員の任免権者である理事長に退職願が到達する前に退職願を撤回する旨の意思表示をしたことについて、裁判所は退職願の撤回を認め、労働契約の合意解約は無効とした事案。
労働者による雇用契約の合意解約の申込は、これに対する使用者の承諾の意思表示が労働者に到達し、雇用契約終了の効果が発生するまでは、使用者に不測の損害を与えるなど信義に反すると認められるような特段の事情がない限り、労働者においてこれを撤回することができる。
原告が合意解約の申込から約2時間後にこれを撤回したものであって、被告(学校)に不測の損害を与えるなど信義に反すると認められるような特段の事情が存在することは窺われず、原告は、理事長による承諾の意思表示が原告に到達する前に、合意解約の申込を有効に撤回したものと認められる。
参考となる判例
【大隈鐵工所事件(最三小判昭和 62 年9月 18 日)】

人事部長に退職願を提出して同部長が受理した後、翌日になって本人が退職願の撤回を申し出たものの会社がこれを拒否したことについて、裁判所は、退職願の撤回を認めなかった事案。
人事部長に退職承認の決定権があるならば、人事部長が退職願を受理したことをもって雇用契約の合意解約の申込みに対する即時承諾の意思表示がなされ、雇用契約の合意解約が成立するので、退職願による合意解約の申込みは撤回できない。

※ 本指針においては、裁判例の分析、参考となる裁判例に関する記述と、雇用慣行、法制度、関連情報等に関する記述とを区別しやすくするため、前者については   で囲み、後者については   で囲んでいる。
また、特に紛争が生じやすい項目については、紛争を未然に防止するために留意すべき点を記述している。
上述のとおり、本指針の裁判例の分析は一般的傾向を記述したものであり、個別判断においては、個々の事案毎の状況等を考慮して判断がなされる。