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―参考―   副業・兼業

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 理由や形態はさまざまながら、副業・兼業を希望する労働者が年々増加する傾向にある一方、多くの企業において副業・兼業は認められていません。

 このような現状や「働き方改革実行計画」(平成 29 年3月 28 日 働き方改革実現会議決定)を踏まえ、厚生労働省では副業・兼業の普及促進を図っており、平成 30 年 1 月に『副業・兼業の促進に関するガイドライン』を策定しました。

 この節では、副業・兼業に関わる現行の制度等を概観するとともに、同ガイドラインの内容を簡単に解説します。

1 副業・兼業に関わる現行の制度

(1)労災保険

 副業・兼業を行っている労働者に対しては、全ての就業先において、それぞれ労災保険が適用されます。

 ただし、労災保険制度は労基法における個別の事業主の災害補償責任を担保するものであるため、実際に労災保険の給付を受けることとなった場合、その給付額については、労働災害が発生した事業場の賃金額のみに基づいて算定されるので、就業している複数の事業場の賃金の合計分を補償することはできません。加えて、労災認定における業務起因性の判断に当たっても、就業先の業務上の負荷と災害との相当因果関係を個別に判断しているため、全就業先の業務上の負荷を合わせて評価することはしていません。

 また、一方の就業先から他方の就業先へと移動する途中で災害が発生した場合、移動先の事業場の保険関係で、通勤災害として処理することとなります。(平成 18 年 3 月 31 日基発第 0331042 号)

(2)雇用保険、社会保険(厚生年金保険、健康保険)

 雇用保険の適用事業所である事業所は、その労働者が副業・兼業をしているか否かに関わらず、被保険者となる者については雇用保険の加入手続を行わなければなりません。ただし、副業・兼業のように、同時に複数の事業主に雇用され、それぞれの雇用関係において被保険者要件を満たす場合は、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係についてのみ被保険者となります。

 社会保険の適用については、副業・兼業を行っている労働者が、それぞれの事業所において適用要件を満たすかあるいは満たさないかによります。

ア いずれの事業所においても適用要件を満たさない場合
社会保険の被保険者とはなりません。それぞれの事業所における労働時間等を合算すると適用要件を満たす場合でも、事業所ごとに要件を満たすか判断するため、被保険者となりません。
イ 同時に複数の事業所で適用要件を満たす場合
労働者がいずれかの事業所を選択し、その選択された事業所を管轄する年金事務所(医療保険者)において、各事業所の報酬額を合算して標準報酬月額を算定・決定します。その上で、各事業主は、合算した報酬額のうち各事業主が労働者に支払う報酬額により按分した保険料を、労働者が選択した事業所を管轄する年金事務所(医療保険者)に納付することとなります。

(3)労働時間

 労基法第 38 条において、「事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定められています。この「事業場を異にする場合」とは、事業主を異にする場合も含みます(昭和 23 年 5 月 14 日基発第 769 号)。

 副業・兼業を行う労働者に対して、労働時間を通算した結果、労基法第 32 条又は同法第 40 条に定める法定労働時間を超えて労働させる場合には、いわゆる法定外労働時間が発生します。このとき、どの事業場が法定外労働時間に関する労基法の義務を負うのかが問題となります。

 このとき、労基法上の義務を負うのは、当該使用者を使用することにより、法定労働時間を超えて当該労働者を労働させるに至った(すなわち、それぞれの法定外労働時間を発生させた)使用者です。

 従って、一般的には、通算により法定労働時間を超えることとなる所定労働時間を定めた労働契約を時間的に後から締結した使用者が、契約の締結に当たって、当該労働者が他の事業場で労働していることを確認した上で契約を締結すべきことから、労基法上の義務を負うこととなります。

 なお、通算した所定労働時間が既に法定労働時間に達していることを知りながら労働時間を延長するときは、先に契約を結んでいた使用者も含め、延長させた各使用者が同法上の義務を負うこととなります。

 代表的な例について、以下の図をご参照ください。

  • (1)甲事業主と「所定労働時間8時間」を内容とする労働契約を締結している労働者が、甲事業場における所定労働日と同一の日について、乙事業主と新たに「所定労働時間5時間」を内容とする労働契約を締結し、それぞれの労働契約のとおりに労働した場合。
  • (2)甲事業主と「所定労働日は月曜日から金曜日、所定労働時間8時間」を内容とする労働契約を締結している労働者が、乙事業主と新たに「所定労働日は土曜日、所定労働時間5時間」を内容とする労働契約を締結し、それぞれの労働契約のとおりに労働した場合。

いずれの場合も、甲事業場において1日又は1週間の法定労働時間に達していることから、乙事業場での労働時間は法定外労働時間となります。

  • (3)甲事業主と「所定労働時間4時間」という労働契約を締結している労働者が、新たに乙事業主と、甲事業場における所定労働日と同一の日について、「所定労働時間4時間」という労働契約を締結し、甲事業場で5時間労働して、その後乙事業場で4時間労働した場合。
甲事業場・乙事業場の所定労働時間を通算した段階で、既に 1 日 8 時間に達していることから、所定外の労働を発生させた甲事業場での労働時間が時間外労働時間となります。

  • (4)甲事業主と「所定労働時間3時間」という労働契約を締結している労働者が、新たに乙事業主と、甲事業場における所定労働日と同一の日について、「所定労働時間3時間」という労働契約を締結し、甲事業場で5時間労働して、その後乙事業場で4時間労働した場合。

甲事業場での5時間(3時間+2時間)に加えて、乙事業場で3時間労働した時点で、既に 1 日 8 時間に達していることから、乙事業場での1時間が時間外労働時間となります。

(4)健康確保措置

 副業・兼業を行っている労働者に対しても、一般健康診断(安衛法第 66 条)やストレスチェック(同法第 66 条の 10)などを実施する必要があります。

 これらの措置について、所定労働時間が一定時間以下(同種の業務に従事する通常の労働者の 1 週間の所定労働時間の3/4以下)の短時間労働者については、実施対象としなくてもよいとされています(平成 26 年 7 月 24 日基発 0724 第 2 号等)。副業・兼業を行っている労働者について、この点においては、複数の事業場の所定労働時間を通算する必要はなく、それぞれの所定労働時間で判断することになります。

 ただし、副業・兼業を行っている労働者に対しては、法定の健康確保措置のみならず、労使の話し合い等を通じて、副業・兼業の状況を踏まえた健康管理を行うことが望まれます。

2 副業・兼業に関する企業及び労働者の対応

(1)企業の対応

 裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当です。実際には、次のような項目について、労使間で十分に話し合うなどすることが重要です。

☑ 自社の実情を踏まえ、副業・兼業を認めるか否か検討する
副業・兼業を認めるとして、①どのような形態の副業・兼業を、②どのような手続で認め、③どのように状況を把握するのかなどについて、予め決めておく必要があります。
☑ 労働者に対する措置について検討する
長時間労働の防止や健康確保措置など、副業・兼業を行う労働者に対する措置内容について、検討することが望ましいです。
☑ (副業・兼業の申出があった場合)その内容を確認する
実際に労働者から副業・兼業の申出があった場合は、それが競業に当たらないか、どの程度の業務量になるのか等を確認します。このとき、労働者に対して必要以上の情報を求めることがないよう留意してください。
☑ (労働者が副業・兼業を始めたら)健康状態等を確認する

(2)労働者の対応

 労働者が副業・兼業を希望する場合には、次のような事項に留意する必要があります。

☑ 企業におけるルールを確認し、副業・兼業の内容について検討する
☑ 上司や人事担当者と話し合う
円滑に副業・兼業を行うためにも、副業・兼業を始める前に、上司や人事担当者と十分に話し合いましょう。
☑ 就業時間や健康を自己管理するよう努める
自らの労働時間や健康状態について管理でき、また、自らの勤務状態等を就業先に伝える際にも活用できるようなツールを利用することが望ましいといえます。
☑ 元の業務に支障が出ていないか考える
元の業務と副業・兼業の業務量、就業時間、進捗状況等を考慮し、両立を難しく感じたり、健康に不安を覚えたりした場合は、副業・兼業を続けるかどうか考え直すことも必要です。
☑ 確定申告について確認しておく
20 万円を超える副収入がある場合は、企業による年末調整ではなく、個人での確定申告が必要となります。国税庁ホームページなどで早めに確認しておきましょう。

3 副業・兼業に関する主な裁判例