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Ⅲ 年次有給休暇

Ⅲ 年次有給休暇

1 年次有給休暇の付与要件

年次有給休暇の付与要件は、

  • ① 入社後の 6 か月間、それ以降は 1 年間継続勤務し、かつ
  • ② 期間中の所定労働日の 8 割以上出勤すること

です(労基法 39)。この要件を満たした労働者には、勤続年数に応じた法定の日数の年次有給休暇を付与しなければなりません。

8 割以上出勤したかどうかの計算に当たっては、労基法の定めなどにより、

  • • 業務上の傷病により休業した期間
  • • 産前産後の女性が労基法第 65 条の定めにより休業した期間
  • • 育児・介護休業法に基づく育児・介護休業期間
  • • 年次有給休暇を取得した期間

は、出勤したものとして、取り扱う必要があります。

2 年次有給休暇の付与日数

1の要件を満たした労働者には、勤続年数に応じた法定の日数(表 1)の年次有給休暇を与えなければなりません。

表1 年次有給休暇の付与日数(週の所定労働日が5日以上又は週の所定労働時間が30時間以上)

勤続年数 6 カ月 1 年
6 カ月
2 年
6 カ月
3 年
6 カ月
4 年
6 カ月
5 年
6 カ月
6 年
6 カ月以上
付与日数 10 日 11 日 12 日 14 日 16 日 18 日 20 日

3 パートタイム労働者などの年次有給休暇(比例付与)

 入社後の 6 カ月間、それ以降は 1 年間継続勤務し、かつ、期間中の所定労働日の 8 割以上を出勤していれば、その労働者がパートタイム労働者などの場合にも勤続年数に応じた年次有給休暇を付与しなければなりません。

 週の所定労働時間が 30 時間未満のパートタイム労働者などのうち、

  • ① 週の所定労働日数が 4 日以下の者 あるいは
  • ② 年間の所定労働日数が 216 日以下である者

については、その労働日数に応じた日数の年次有給休暇(表2)を与えることとされています(これを「比例付与」といいます。)。

 なお、パートタイム労働者なども週の所定労働日数が 4 日以下であっても所定労働時間が 30 時間以上の者には、通常の労働者と同様の日数(表1)の年次有給休暇を与えなければなりません。

表2 比例付与日数

週所定労働日数 1 年 間 の 所定労働日数 勤 続 年 数
6 カ月 1 年
6 カ月
2 年
6 カ月
3 年
6 カ月
4 年
6 カ月
5 年
6 カ月
6 年
6 カ月以上
4 日 169 日~216 日 7 日 8 日 9 日 10 日 12 日 13 日 15 日
3 日 121 日~168 日 5 日 6 日 6 日 8 日 9 日 10 日 11 日
2 日 73 日~120 日 3 日 4 日 4 日 5 日 6 日 6 日 7 日
1 日 48 日~72 日 1 日 2 日 2 日 2 日 3 日 3 日 3 日

4 労働者の年次有給休暇の時季指定と使用者の時季変更権

 年次有給休暇は、下記 5 の計画的付与を行う場合を除き、労働者の指定する時季に与えなければなりません。すなわち、労働者が年次有給休暇を取得するとして、その時季を指定した場合には、使用者は、これを取得させないということはできません。

 ただし、労働者が指定した時季に年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者は他の時季に変更することができます(これを「時季変更権」といいます。)。

 この時季変更権は、単に「仕事が忙しいから」とか「人手不足だから」という程度の理由でこれを行使することはできません。また、使用者で代わりの時季を指定することはできません。

5 年次有給休暇の計画的付与

 年次有給休暇は、原則としては労働者の指定する時季に与えることになりますが、年次有給休暇の計画的付与について労使協定を結んだ場合、労働者の年次有給休暇日数のうち 5 日を超える部分については、その協定で定めた時季に年次有給休暇を与えることができます。

 すなわち、年次有給休暇のうち 5 日までの日数については、労働者の指定する時季に与える必要がありますが、5 日を超える日数については、あらかじめ労使協定により与える時季を決め、それに基づき、計画的に付与できます。

 計画的付与の方式として

  • ① 事業場全体の休業による一斉付与
  • ② 班別による交替制付与
  • ③ 年休計画表による個人別付与

などがあります。計画的付与は、年次有給休暇を積極的に消化し、余暇の活用を促す観点からも有効です。

 ただし、①などの場合、新入社員など年次有給休暇が全くない者や年次有給休暇の日数が計画的付与をしようとする日数に足りない者に対しては、特別に付与したり、付与日数を増やすなどの措置が必要になります。

6 年次有給休暇の半日単位付与

 年次有給休暇は継続し、または分割して与えることとされていますが、与える日数は「労働日」を単位としていますので、労働者が半日単位での年次有給休暇を請求した場合、使用者はこれに応じる義務はありません(昭 24.7.7 基収 1428、昭 63.3.14 基発 150)。

 しかし、近年、労使双方が年次有給休暇について、「半日単位」で取ることを希望している状況から、「労働日」を単位とするという原則を踏まえつつ、労働者が半日単位の取得を希望して時季を指定し、これに使用者が同意した場合であって、本来の取得方法である労働日を単位とする方法による休暇取得の阻害とならない範囲で適切に運用される限りにおいて、問題がないものとして取り扱うこととされています(平 7.7.27 基発 33)。

7 年次有給休暇の時間単位付与

 6の半日単位付与とは別に、労使協定を締結すれば、年5日を限度として、労働者が希望することを前提に、時間単位で年次有給休暇(以下「時間単位年休」といいます。)の付与・取得が可能となっています(労基法 39④)。

 労使協定で定める事項は、次のとおりです。なお、時間単位年休は、休暇に関する事項となりますので、就業規則にもその内容を記載しなければなりません。

(1)時間単位年休の対象労働者の範囲
 対象となる労働者を定めます。仮に一部を対象外とする場合は「事業の正常な運営」を妨げる場合に限られます。例えば、育児を行う労働者に限るなど取得目的により対象範囲を定めることはできません。
(2)時間単位年休の日数
 5日以内の範囲で定めます。前年度からの繰越しがある場合は、繰越し分も含めて5日以内となります。
(3)時間単位年休1日の時間数
 1日分の年休に対応する時間数は所定労働時間数を基に定めます。なお、1日の所定労働時間が 7 時間 30 分など時間に満たない端数がある場合は、1日8時間に切り上げて計算しなければなりません。
(4)1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数
 1時間以外の時間を単位する場合は、その時間数(例「2時間」)を定めます。労使協定例は、次のとおりです。

時間単位の年次有給休暇に関する労使協定

 株式会社代表取締役社長○○○○○と従業員代表○○○○○は、年次有給休暇を時間単位で付与することに関し、以下のとおり協定する。

(対象者)
第1条 すべての労働者を対象とする。
(日数の上限)
第2条 年次有給休暇を時間単位で取得することができる日数は、各労働者が保有する年次有給休暇の日数以内とし、かつ、最大で5日以内とする。
(1日分の年次有給休暇に相当する時間単位年休)
第3条 年次有給休暇を時間単位で取得する場合は、1日分の年次有給休暇に相当する時間数を8時間とする。
(取得単位)
第4条 年次有給休暇を時間単位で取得する場合は、1時間単位で取得するものとする。
(時間単位年次有給休暇の繰越)
第5条 取得しなかった時間単位の年次有給休暇については、翌年度に繰り越すことができるが、翌年度取得できる時間単位年次有給休暇は繰り越し分を含め、最大で5日とする。

○ 年4月1日

株式会社               
代表取締役社長  ○○○○○○○  印
従業員代表    ○○○○○○○  印

8 年5日の年次有給休暇の確実な取得

 年次有給休暇は、原則として、労働者が請求する時季に与えることとされていますが、職場への配慮やためらい等の理由から取得率が低調な現状にあり、年次有給休暇の取得促進が課題となっています。

 このため、今般、労基法が改正され、平成 31 年4月から、全ての企業において、年 10 日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日については、使用者が時季を指定して取得させることが必要となりました。

(1)対象者
 法定の年次有給休暇が 10 日以上付与される労働者が対象です。対象労働者には、管理監督者や有期雇用労働者も含まれます。
(2)年5日の時季指定義務
 使用者は、労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、取得時季を指定して年次有給休暇を取得させなければなりません。
(3)時季指定の方法
 使用者は、時季指定に当たっては、労働者の意見を聴取しなければなりません。
また、できる限り労働者の希望に沿った取得時季になるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければなりません。
(4)時季指定を要しない場合
 既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、使用者による時季指定をする必要はなく、また、することもできません。
 (※)労働者が自ら請求・取得した年次有給休暇の日数や、労使協定で計画的に取得日を定めて与えた年次有給休暇の日数(計画年休)については、その日数分を時季指定義務が課される年5日から控除する必要があります。

9 年次有給休暇の繰り越しと買い上げ

 年次有給休暇の時効は付与されてから 2 年間となっていますので、付与された当年に使われなかった年次有給休暇は、翌年度に繰り越されます(労基法 115)。

また、年次有給休暇は、休むことに意義があるので、事前に年次有給休暇を買い上げて労働者に取得させないことは労基法違反となります。

10 年次有給休暇に対して支払う賃金

 年次有給休暇を取得した場合には、その日数に対して、就業規則その他で定めるところにより、

① 平均賃金
原則として過去 3 か月間の賃金総額(臨時の賃金、賞与を除きます。)をその期間の総日数で割ったものです(92 頁参照。)。
② 通常の賃金
休暇をとった日に通常どおり出勤したものとみなして支払われる賃金額です。
③ 健康保険法による標準報酬日額(労使協定がある場合に限ります。)

のいずれかを支払う必要があります。最も一般的なものは、②の方法です。

 なお、年次有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしてはいけません(労基法 136)。

11 年次有給休暇管理簿

 使用者は、労働者ごとに年次有給休暇管理簿(時季、日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした書類)を作成し、当該年休を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存しなければなりません。(年次有給休暇管理簿は労働者名簿または賃金台帳とあわせて調製することができます。また、必要なときにいつでも出力できる仕組みとした上で、システム上で管理することも差し支えありません。)